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夏の終わりに優しさを

 毎年、夏はやって来る。
 夏、というと、季節を感じ、照り付ける太陽、入道雲、向日葵、すいか、……と並べたくなるが、近年、気象状況が変わってきた。
 言葉にできない程、暑いのだ。
 
 今年2019年の夏もまた、酷暑だった。
 私自身、体温調節が難しい体をもつので、暑さ対策は欠かせない。
 20代の頃は体力が無く、夏になると、いつも伏せっていた。今50代に入り、体力はついたものの、このところの異常気象には閉口するばかりである。
 特に、我が街・京都市は、盆地であるため、蒸し暑く、気温以上に熱気を帯びる。
 熱中症、という言葉も、夏の常套句になってきた。今年の熱中症対策には、初めて経口補水液を活用した。
 熱中症予防に効果的なそれは、こまめに補給することが大切である。無味だったり、甘く感じた場合は、既に脱水症状が出始めているサインなので、注意が必要だ。しょっぱく感じる場合は、健康体である。
 私は通勤途中や、カルチャースクールの合唱の合い間、日中、部屋で過ごす時も、この経口補水液を飲んで、熱中症をしのいだ。
 
 とにかく、今年の夏も暑かった。
 そういえば今年は、夏の終わりに最近ではめずらしく、3日ばかり夕立ちがあった。
 その時ふいに思い出されたのが、昭和51年(1976年)、小学校4年生の時の、小学校校庭の景色である。
 その年の9月初旬、放課後の教室の窓から外を見ていると、稲妻がピカッ、と光って、遠くで雷が鳴った。急に辺りが暗くなり、胸がざわざわする。やがてしとやかな、けれど激しい雨が降る。それは夏の太陽から発せられたじりじりとした熱気を、ス――ッと拭い去ってくれる。見ると校庭には、早くも水たまりが出来ていた。
♪ピシャン、ピシャン、コロロ、コロコロ。
 雨つぶの落ちてくる音を歌にして、友達と歌った記憶も、色褪せてはいない。
 
 あの頃、40数年前は、夕立ちで昼間の暑さが和らいだものだ。
 懐かしい、というよりも、あの頃の夏が本当の夏のように思える。すべての生き物に対して、優しい夏だったからだ。
 とは言うものの、私達は来年も夏を迎える。来年も暑くなるだろう。夕立ちを期待しながらも、冷房対策は? 服装や飲み物は? と、思いを馳せる。そして願わくは、酷暑でないように、と祈りつつ、毎年健康で夏を乗り切りたい、と思うのである。


 
 (完)

 作成 2019.10


今年の夏の暑さをテーマにエッセイを書く。

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