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眠り姫はかく語りき

『今日、京響?』でおなじみの京都市交響楽団は、今年二〇一六年に創立六〇周年を迎える、プロのオーケストラである。
 私は、京響の一応援者として、年に十回程、演奏会を聴きに行くのを楽しみにしている。
 
 定期演奏会、オーケストラディスカバリー、京都発見クラシックに、きもの&京響、等々。鑑賞してきたコンサートは数あれど、実は、最後まで眠らずにいられたことは、ほんのわずかしかない。毎回、≪スリーピングコンサート≫と化すのである。
 
 本番直前、会場のライトが消えると、
(あ、やばい)
 チューニングが始まると、
(あぁ、あかん)
 定期演奏会で、聴いたことのない曲が流れようものなら、すぐに上瞼と下瞼が閉じていく。私には、睡魔という魔物と闘って、それに打ち勝つ術はない。
 ゆったりとした空間の中で、お花畑にいる眠り姫のように、優しい音色に揺られながら、うつらうつら……
 ——ジャン、ジャカジャン!!
 大音響のフレーズに、ハッ、と目を覚ます。
(またや。やめてほしい、急に大きな音出すの。心臓がバクバクするやんか(笑))
 ガクン、と首が動き、周りを気にしながらも、視線を舞台上へと戻す。
(ふぅ。また寝てしもうたわ。悪い、とは思うねんけど……。今日も京響、頑張ってるし、ええんやけど、なんて言うか、一本、極細の緊張の糸みたいなんが欲しいねんな。定期演奏会やからこそ、〝一音集中〟やで)
 音楽のの字も分かっていない素人が、生意気にも、そう願っているのだ。
 
 それに私は、京響の楽団員さん達を、うらやましく思う。音楽は聴くのも素敵だけれど、演奏する方が数十倍、面白い。私も中学生の一時期、ブラスバンド部で活動していたから、演奏するビリビリ感がこちらにも分かり、面白さが伝わってくる。
 特にパーカッションは、全楽器のリズムの元になる、縁の下の力持ちだから、どうしても目がいってしまう。時々、びっくりするぐらいの、ド派手なパフォーマンスがあったりして、ワクワクがとまらない。
 
 二十歳の頃から、京響を応援するようになって約三十年。私も京響と同じく、京都に歩み育ち、その歴史を見守り続けてきた。これからも、世界に誇れる楽団を目指して、日々研鑽を積んでいってもらいたい。

 ——と、その前に。是非、眠り姫にかかった魔法を、解いてほしいものだ。私は何度でも、コンサート会場に足を運ぶ。
 
 さぁ、頑張れ、京響!

-FIN-

 作成 2016.05


テーマ 居眠り体験についてエッセイを書く。

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