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心の旗は朱華色(はねずいろ)

  いつからだろう、冬の寒さに体がついていかなくなったのは。アラフォー世代に入り、私の体は急に寒さに弱くなった。すぐにカチコチと動きづらくなるのだ。
 西高東低の気圧配置は、私に頭痛をもたらし、冬の到来を告げる。近年、暖冬が続いているとはいえ、今年2010年の冬将軍は、勢力が強く、度々冷たい風雪を運んでくる。
 
 朝4時30分、まだ夜明け前に目を覚ます。けれど体を起こすには、ストレッチをして、栄養ドリンクを飲む必要がある。筋肉が固まらないように、薬も服用している。
 ゆっくりと体を動かし、目が冴えたところでふうっ、と一息。冬の太陽が昇ってくる。やわらかく暖かな朱華色の日差しは、キリキリとした空気をほわっ、と和ませてくれる。
 
 朱華色。一般的にはサーモンピンク系の色とされているが、染色家、吉岡幸雄(よしおかさちお)氏によると、朱華(唐棣花(はねず))とは安石榴(ざくろ)の花を指し、紅花の赤色に支子(くちなし)の黄色を掛け合わせた、オレンジ系の色を朱華色というらしい。
 
 私はこのことを知った時、この色を冬のイメージカラーにしようと思った。
 シルバーグレーの風や、プラチナホワイトの雪に負けないように、戦国武将が軍旗を掲げて、戦いに臨んだと同じく、私も、冬の季節に心の旗をなびかせてみよう。
 そして体を動かす、歌を歌う、文章を書く。
 通院や家事手伝いも、午前中にこなすことが多い。昼を過ぎると、電池が切れたかの如く、体が動かなくなるからだ。本数に制限のある栄養ドリンクには、もう頼れない。水分と昼寝で、体力の回復を図る。
 自室にはオイルヒーターがあり、外の気温が10℃以下の時も、部屋の中はじんわりと暖かい。このオイルヒーターが発する熱もまた、イメージでは朱華色である。
 家の外では冬の太陽が、家の中ではオイルヒーターが、寒さに弱い私の力強い応援団だ。いつも暖かく励ましてくれる。
 
 午後2時頃、再び体を起こす。部屋で読書などしながら、のんびりと過ごす。調子が良ければ外出もする。そして夜の9時には就寝。そういえばこの頃、テレビドラマを見なくなった。少し寂しい気もするが、お肌のためには早寝早起きもいいだろう。
 
 こうして冬の一日は淡々と過ぎていく。人から見れば、味気ない日々に映るかもしれない。しかし私には、一日一日がいとおしく、楽しく、充実した毎日なのだ。
 これからは、冬の空に朱華色の心の旗をはためかせて、清々しく冬を乗り切りたい。かけがえのない日々を、積み重ねていくために。

-FIN-

 作成 2010.02


テーマ 冬を感じるエッセイを書く。

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