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目覚めよ! 天運!!

 私は今、プチプチ(緩衝材)を潰すことに熱中している。
 プチッ、『当たりますように』
 プチッ、『お願いです』
 プチッ、『神様、仏様、皆々様ーー!!』
 だが私の関心事は、プチプチを潰すことではない。年末ジャンボ宝くじ≪プチ≫の抽選のことである。
 
 年末ジャンボ宝くじは、毎年恒例だが、今年2016年、当選賞金・1000万円の≪プチ≫が新設された。
 私は≪プチ≫に飛びついた。
 億単位の数字に、なぜか引け目を感じて、買えずにいた年末ジャンボ宝くじ。≪プチ≫の1000万円という金額は、まさに、
『キターーッ!!』
 である。これなら使い道もバッチリだ。
 なけなしのお金を握りしめ、まず購入日を決める。
『このお金が残ってるうちに買わんとあかんしな。12月1日、“先勝”か。うん、キリもええし、この日の午前中に買いに行こ』
 
 購入場所は決めてある。京都、四条大宮東側。京都の繁華街といえば、四条河原町周辺か、京都駅界隈なのだろうが、西陣地区に生まれ育った私には、四条大宮で充分。その場所なら気軽に行くことができる。
 
 そういえば、初めて一人で映画館に行ったのも、四条大宮にある大宮東映だった。
 1978年(昭和53年)、12歳の私は、初めて一人で市バスに乗り、20分程かけてはるばる四条大宮までやって来た。どこへ行くにも、父や母と一緒だった箱入り娘の私が、一人で外出する、と言うので、両親はさぞや心配したことだろう。
 そうまでして観たかった映画は、
"さらば宇宙戦艦ヤマト〜愛の戦士たち〜"
 だった。懐かしい。
 その大宮東映も今はない。現在は、少し寂れた風情のある街となった、四条大宮である。
 
 そんな思い入れのある場所での、人生初の≪プチ≫体験。
 12月1日、朝8時30分。宝くじ券を手にした私は、会う人会う人に、
「宝くじ買(こ)うてん。≪プチ≫なんやけど」
 と、言っている。
 私は自分のくじ運を信じている。人に言うと運が逃げていく、などとは思わない。むしろ、力を借りられる、と思えるのだ。そして、
『念ずれば通ずる、目覚めよ、天運!!』
 とばかりに、プチプチを潰しているのだ。
 抽選日まであとわずか。部屋をきれいにして、風水師ドクター・コパの言うことも聞き入れよう。あとは運を天に任せて祈るだけ。
 2016年12月31日。
 運命の日が訪れる。

-FIN-

 作成 2017.01


初体験をテーマにエッセイを書く。

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