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りょうま残影

 昨年2017年に、降って湧いたような、〈坂本龍馬(さかもとりょうま)の名前が教科書から消える〉問題。
 あーらら、と思っていたら、2020年からの教育改革が進んでいるという。
 その内容は、今までの詰め込み教育を止めて、思考力、判断力、表現力を養うというものだ。具体的には、教科書は使わない、生徒自身が授業をする、生徒同士でテスト問題を作る、など画期的である。
 しかし坂本龍馬本人は、この事態をどう思っているだろう。いや、教科書に載ることよりも、日本の為に力を尽くす若者が、ひとりでも多く現れてほしいと、草葉の陰から見守っているに違いない。
 
 ところで私は今、同じ"りょうま"でも、昨年ブレイクした俳優・竹内涼真(たけうちりょうま)に、熱を上げている。今年52歳になる、今も独身の私にとって、彼は一服の清涼剤だ。
 彼、竹内涼真は、1993年生まれの若手俳優。代表作に、『ひよっこ』の主人公の初恋の人・島谷純一郎(しまたにじゅんいちろう)役や、『陸王』の陸上部ランナー・茂木裕人(もぎひろと)役などがある。
 何より彼は、明るくさわやかな青年だ。多分に無理をしているようにも見えるのだが、若さで乗り切ってほしい。
 
 私には子供がいないせいか、好きな俳優は、年下なら全て"弟感覚"となる。中でも今は、竹内涼真が別格なのだ。私にも弟がいる。少し頼りないが、いいヤツだ。それでも私の、希望と欲望は渦を巻く。かっこいい涼真くん、私の弟になってくれないかなぁ、と。
 私が涼真くんを思う時、ひとつの事柄に突き当たる。実は、私と弟との間には、生まれてこなかった水子がいる。母は毎朝、仏前に拝んでいるようだ。そしてその子は、生まれたとしたら、大変な人生を歩むことになっただろう。身体障害を持つ私と、知的障害を持つ弟の間で、苦しみ、悩んで、絶望すら抱いたかもしれない……。
 否。もしも生まれていたならば、涼真くんのように、明るく清々しい笑顔で、私達に幸せを運んでくれたはずだ。
 
 私は涼真くんを観るたびに、会えなかった弟妹のことを思う。どんな風に育ったのか、どんなものに興味を持ったのか、背は高いか、かっこいいか、などと想像してみる。
 するとその子は、私の中で生き生きと輝き、私はその子に会って、伝えたくなるのだ。
「私は頑張っているよ」
 今の自分に満足せず、これからも見て、聞いて、触れて、努力していこうと思う。私には、それが出来る≪命≫があるから。

 そして、俳優・竹内涼真にも、私達に生きる力と夢を与えられる、素晴らしい役者人生を送ってほしいと、心から願っている。

-FIN-

 作成 2018.04


"もしもできるなら〇〇に会って伝えたい一言"をテーマにエッセイを書く。

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