ここは雪の妖精の住む国。
毎年、雪の妖精は冬の間だけ、外界との行き来が認められていました。
双子の雪の精スイニとエークは、まだ一度もこの国を出たことがありません。今年こそ外界に出よう、と決めていましたが、雪の妖精界の王様は、そんな二人を窘めました。
「僕たちだって出てもいいじゃないか」
スイニが王様の背に向かって、聞こえない程の小さな声で怒りの言葉を吐きました。
「本当だね、出たいなあ」
エークも小声でスイニに同意しました。
「そうだよ、そうだ。……あっ、いい考えがある!」
スイニはエークに耳打ちしました。
「この冬の間は王様の言うことをよく聞いて、大人しくするんだ。そして春先になったら、外界へ出してもらうんだ」
早速二人は王様のもとへ行き、なんでもする代わりに、春先になったら外界へ行かせてほしい、と願い出ました。しかし王様は、首を縦には振りませんでした。二人にはまだ早いと言って、取りつく島もないのです。
「お前たちはまだ幼い。外の世界の、特に太陽の怖さを知らないのだ」
その言葉に、スイニは腹を立てましたが、エークは、そんなに怖いのなら何年か待つ方がいいのかな、と思うようになってしまいました。
王様に断られたことで、大人しくしていたスイニでしたが、他の妖精たちが、
「楽しかった。来年もまた行くんだ」
という話をしているのを聞くと、居ても立ってもいられなくなり、ついに、
「よし行こう!」
と、心に決めたのです。エークは心配でした。だからスイニを一人では行かせられないと、一緒について行くことにしました。
ゴォー、ゴォー。
外界には冷たく強い風が吹いていました。見たことのない生き物が歩き、光の輪が辺りを照らしています。
「すごいねー、びっくりだね」
二人は目を丸くして舞い続け、時間が経つのを忘れていました。
と、その時、カッ、と眩しい光が射したかと思うと、急に暖かくなってきました。
「あっ! そうか!!」
エークは、王様の言おうとしていたことが、やっと分かりました。雪の精は、太陽の下では生きられなかったのです。
隣にいたスイニは、太陽の熱で、溶けはじめていました。でもスイニは舞うのを止めませんでした。もちろんエークもです。
サクッ、サクッ、サラサラ、サラサラ……。
雪は太陽の光を受けて、キラキラと輝いています。
それは雪の精の、最後の舞う姿なのです。
-FIN-
作成 2019.01
テーマ "起承転結"の"承"の冒頭で「そうだ」の同意の台詞ではじまるフィクションを創る。