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我が家は楽しい動物園

私の家族は、自分で言うのも何だが、割と仲の良い家族だと思う。父、母、私、弟の4人家族で、今年2017年(平成29年)の年賀状にも、『カルガモ一家をよろしく』と書いたくらいだ。
 
 父は当年とって75歳、現役バリバリの西陣織の織手さんだ。獅子座のB型で、明るい性格、と言ったら聞こえは良いが、単純でお調子者なのかもしれない。お酒が大好き。
 母は父と同い年。去年、60年勤め上げた西陣織の織手さんを、引退した。牡牛座のA型で、しっかり者の一家のまとめ役だけど、融通が利かないところがあったりする。
 私は≪あの≫丙午生まれで、今年51歳。自分では我が家の戸締まり役だ、と思っている。双子座のB型で、何事にも楽観的。他の人からは真面目な性格、と言われる。
 弟は今年49歳。自分のことを棚に上げて言うと、弟も随分オジサンになったものだ。蠍座のO型で、とにかく頑固。おおらかでのんびり屋のところは、昔のままだ。
 
 そんな4人家族は、休日になると揃って食事する。家族団欒、仲の良い楽しい家庭がここにある、と思える。
 しかし、その輪が一旦崩れると、我が家に嵐が吹き荒れる。罵詈雑言、雨霰。それでも、本気で悪態をついているわけではないので、どこか間の抜けた言葉が飛び交う。
 中でも、弟の発する言葉は面白い。
「お姉さんは大ブタ! お母さんは小ブタ! お父さんはゴリラ!」
「え——っ? 前にお姉さんはバンビ、お母さんは可愛いリス、って言うてたやん。お父さんはサル、やけど……」
「今は大ブタ!!」
"大ブタ"というのは、ちょっと傷つく。頑張ってダイエットしてるのに。でも本質を衝いているから、何も言い返せない。
 弟は知的障害があり、人が嫌がる言葉は、嫌な動物に例えることで、人が喜ぶ言葉は、可愛い動物に例えることだ、と思っている。 普段は私のことを、バンビに似てる、と持ち上げてくれている弟にも、気分の良し悪しで、都合というものがあるのだろう。
 ブタにゴリラにサル。弟に"嫌いな動物"にされた動物さん達には申し訳ないけれど、弟の機嫌を直すために必要なので、よろしくお願いしたい。
 
 私も若い頃は、両親の欠点を許せずにいたが、近頃は弟を見習って、人を憎まず、例えて言うなら、『我が家は楽しい動物園!』ということで済ませている。私も欠点ありきの、周囲の人達に助けられながら生きている、ひとりの弱き人間なのだから。

-FIN-

 作成 2017.03


テーマ 「たとえて言うなら」このフレーズを使い、エッセイを書く。

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