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いただきます!

 昔から私は、出された食べ物は残さず食べるようにしている。四十四歳になった現在も、その食欲は変わらない。その結果、付いてほしくないところにまで肉が付く。その度に、〝ダイエット〟の文字が頭に浮かぶのだ。
 
 それでも食欲は、活動的な毎日を過ごしている今の私にとって、体力維持には不可欠なものである。それは、丈夫な胃腸が元気に働いてくれている証拠なのだ。
 
 三十代の頃、私はいつも疲れて寝込んでいた。病院へ行くと、医者からよく、
「眠れていますか? 食べられますか?」
 と、質問された。
 身体の機能が弱っている中で、眠れなかったことは多々あるが、胃腸だけはしっかり働いてくれていたのか、食べることは出来ていた。医者の、
「食べられるのなら大丈夫。死にはしませんよ。安心なさい」
 という言葉も信じられた。
 インフルエンザで高熱が出ても、
 大学受験に失敗して落ち込んでいても、
 失恋した時でさえ、
 食べられなかったことは、一度もなかったからだ。悲しくても辛くても、人間はお腹が空くんだな、とつくづく思う。
 そして私は、お腹が空くことの出来る、健康な胃腸を持っているのだ。
 確かに私には、てんかん うつ の症状があり、今も治療中である。けれど薬などを服用して、うまく付き合っている。右半身の麻痺も(これは割と大変なのだが、)生まれつきということもあって、慣れたものだ。
 これまで、これらの病気を乗り越えてきたのは、生きるための根本である、食事が出来ていたからだと思う。
 
 大げさでなく、私は、強い胃腸のおかげで生き延びてこられた。この身体を授けてくれた両親に、本当に感謝している。
 私は今、食べられることの喜びを噛み締めている。これからも、おいしいものをたくさん食べよう。そして、幼稚園児だった頃、いつも言っていた言葉を、今、素直に言おう。
「お父さん、お母さん、ありがとう。
 先生、みなさん、いただきます!」

-FIN-

 作成 2011.04


テーマ<連動課題A> 体の一部を取り上げてエッセイを書く。

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