top of page

アラ還、限界ヲ突破セヨ

 今年、令和3年(2021年)6月、私は55歳となった。
 これまでの人生で、“生きていく上で大切な事”は、“何事も経験の中から生まれてくる”、と学んだ。人生を振り返ると、失敗という経験の連続から、[生活の知恵]を生み出した、創意工夫を行っていた。
 生まれつきの右半身麻痺、20歳からのてんかん発作、25歳からのうつ症状。
 これらが、全ての失敗の原因とは限らないが、人生に於いて少なからず影響を受けたことは、間違いない。特に、右半身麻痺は、私にとって一生の付き合いになるものだ。
 
 私は幼稚園から高等学校まで、普通学級に通っていた。そのため、左半身だけ動かせての学校生活の仕方を、誰も教えてはくれなかった。例えば小学生の時の話だ。
 体育。障害物競争で、網が右手にひっかかった。失敗。私は幼い頭と心で考えた。どうしたらスムーズに動ける? 出した答えは単純明快、私は右手を体操服で隠したのだ。
 音楽。リコーダーはファから上のレの音までしか吹けない。辛い。このまま見学するか。私は幼い頭と心で考えた。どうしたら奏でられる? 出した答えは変則解答、私は楽譜の吹ける音だけを追って吹くようにしたのだ。
 家庭生活では、両親の「こうしてみたら」の言葉に従って行動するも、ことごとく失敗。
 靴下が履けない。ブラウスのボタンが嵌められない。私は左手だけで服が着られるように、何度も何度も練習した。
 お風呂で背中が洗えない。私はシャンプーの液体を背中に流し、洗うことにした。
(私が小学生の頃は、ボディソープもボディブラシも無かったのだ)
これらは全て[生活の知恵]だった。

 てんかん発作や、うつ症状を発症した時も辛かった。その当時は、明日も将来も未来も全く見えなかった。
 20年をかけて、暗闇から脱出した。
 きっかけは“自分を好きでいたこと”だ。
 今、20年間の、気負いも苦しみも寂しさも後悔も全て糧にして、進んでいく私がいる。
 そんな私だからこそ「止まない雨は無い」と他人(ひと)に言えると思う。
 今まで経験してきた全ての事柄のお陰で、今の私が在るのだ。
 現在、55歳の私。常に好奇心を持ち、若々しくいたいと思う。
 これからも失敗はするだろう。だが、立ち止まってはいられない。失敗を恐れずに、自分の限界をも突破していける、素敵なアラ還(アラウンド還暦)でありたい。
 その経験が、私を器の大きな人間に導いてくれると、信じている。

-FIN-

 作成 2021.08


「生きていく上で大切な事は〇〇から学んだ」をテーマにエッセイを書く。

bottom of page